古美術品を扱う方から「お店に大黒人形を置くといいですよ」とのアドバイスをいただきました。その際、こんなエピソードを…。
東京のとあるお饅頭屋さん。美味しいけれど、通りから少し入った決して立地がいいとはいえない場所。にもかかわらず行列が絶えず、不思議に思っていたところ、ふと見ると、行列のお客様の背中を見下ろすように大黒人形が。
この方、その様を見て腑に落ちられたとのこと。その話を聞いた私も鳥肌が立ちました。商売の厳しさもよくご存知で、「こうしたお力に、あやかればいいのよ」とも言っていただきました。
商売をするなら、誰しもこんな繁盛店になりたいものです。いいことを聞いた、それならうちも…。そうも思いましたが、鳥肌が立ったというのは、それとは少し違う感覚でした。
昔話や民話には様々な神様が出てきます。福の神や貧乏神、神様とは違いますが座敷わらしや、物の怪というのでしょうか、摩訶不思議なものたちも。心掛けをよくしていたら味方になってくれ、邪な心を持つと悪さをするとか。行いの善悪の目安が、子供にもわかりやすいよう、こうしたたとえ話になったのでしょう。
幼い日にワクワク、ドキドキで読んだ話は、大人になっても残っているもののようです。こうした神様が、今でもいたるところにいらっしゃる気がしてなりません。 そんな私ですから、これはもう大黒様に来ていただきたくってしょうがなくなった次第です。
といっても、大黒人形って、どこに売っているんだか。思いついたのが「しののめ寺町」近くの家具街、夷川通りに古くから続く唐木家具のお店です。ここの大奥様、80歳を超えてなおお綺麗で、毎日元気にお店に出ておられます。うちの開店以来、ごひいきいただいていて、商売の極意や人生の機微などを、いつもユーモラスに話してくださいます。
さっそく訪ねて事情を話すと、「ああ、あれ」と言って、出してきてくださったのが一木造の大黒人形。木肌に年輪が浮き出て、飴色のいい艶が出ています。大きさもいい具合で、なにより表情のいいこと。申し訳ないくらいリーズナブルな価格で、一目惚れで譲っていただきました。一つ一つの家具、小物を大切に扱われ、売れた折には嫁に出す思いと話されていた大奥様、お互いに胸いっぱいの売買でした。
先日、大奥様がご来店、飾り棚に置かれた大黒様を見て、「ええ場所に置いていただいて」と、とても喜んでいただきました。「毎日、撫でてあげると、ますますええ艶が出まっせ」とのこと、実践しています。
米俵を踏みしめ、打ち出の小づちをかざした勇ましいポーズ。背中には床につかんばかりの大きな袋。お宝がいくらでも入りそうです。そして思わずこちらまで和んでしまう柔和な表情。なにもかもがめでたいこと、めでたいこと。そこに居てくださるだけで、すでにご利益いっぱいです。
あれやこれや、もっとご利益を、と思わないではありませんが、そう思ったが最後、大黒様はそっぽを向いてしまわれそう。欲深い心は持たないことにします。
ご来店の折、大黒様を見つけられたら、ぜひ撫でて差し上げてください。ご利益は一人占めするより分け合うもの、大黒様はきっとそうお望みだと思います。
紹介コーナーでも載せていますが、ただ今発売の雑誌「まっぷる歩く京都」で「しののめ寺町」が掲載されています。
少しずつですが、こうした取材を受ける機会が増えてきました。通常、カメラマンさんとライターさんの二人で来られるのが基本でしょうか。この時は若い女性のコンビでした。ライターさんが、私たちの話を一所懸命書きとめられていた姿が印象的でした。
というのも…、実は私、数年前に一度だけこうしたライターの仕事をさせてもらったことがあるんです。情報雑誌のラーメン店特集で、ラーメン屋さんを取材して記事を書くというものでした。
ラーメン店の店主といえば頑固一徹、こちらの対応が気に食わなければ怒鳴りつけられるだの、ラーメン店の取材が出来たら、あとはどんな店でも大丈夫だの、事前にずいぶん脅されました。それでも、めったにできない経験と思い、興味津々で引き受けたのでした。
一番初めに訪ねたのは、かなりの老舗店です。頑固親父に「とりあえず食ってみろ」なんて言われる場合も想定して、空腹で出かけたのですが、待っておられたのは結構高齢の女性でした。カウンターに出されたのはラーメンならぬアイスコーヒー、ちょっと拍子抜けし、そしてホッとしたのを覚えています。
雑誌の発売前だったか、直後だったか、この店の前を通りかかると、違う店名のラーメン屋さんに変わっていました。取材時に雑誌の発売予定日を聞かれ、数ヶ月先の予定であることを伝えると、「もっと早、出たらええのになぁ」とポツリと漏らされた女将さんの言葉が、妙に心に引っかかっていました。廃業に至る事情は知る由もありませんが、商売の厳しさを思い知らされた、とてもショックな出来事でした。
次に訪ねたのは、料理人さんが独立して始められたという店でした。確かにそんな風情のご主人で、繁忙時間が過ぎ、奥様らしき方が自転車で帰っていかれるところでした。パートさんを雇うより、そりゃあ奥様頼みだろうな、なんて思いながら後ろ姿を見送ったのですが、まさか数年後、自分も似たような立場になるとは想像もしませんでした。こちらの店は今も健在で、通りかかるたびにご夫婦のことを思い出します。
幸い大きなトラブルなく十数件の取材を終えました。そのなかで得た情報をもとに、個々の店の良さを精一杯表現する作業は楽しいものでした。少しずつでもこの仕事を続けられたらいいなと思いましたが、そんな甘い世界ではなかったよう。一度きりの思い出で終わってしまいました。
書く側の仕事は叶いませんでしたが、気づけば、書かれる側の仕事をするようになっていました。本当に先のことはわからないものです。いずれにせよ、どちらも厳しい仕事です。
うちに取材に来てくださった方たちに、いつまでも安心してもらえるような店でありたい。一度きりでもライターの経験のある私は、切にそう願います。
もう気づいてくださっている方はあるでしょうか。塩昆布の袋が新しくなりました。
うちの看板商品は、なんといってもじゃこ山椒です。塩昆布はその1割にも満たないでしょうか。なんにつけそうですが、少しの量でものを作るのは割高なものです。というわけで、じゃこ山椒の袋を併用してきました。
お姉ちゃんのお下がりを着せられた妹を見るような…。主役の横で肩身が狭そうな脇役を見るような…。
不憫に思えて仕方がなかったのですが、ようやく専用の袋を作ってやることが出来ました。文句も言わず、健気に頑張ってきてくれた塩昆布、それはそれなりにいい役割を演じてくれています。これくらいのご褒美があってもいいのではと。
娘にやっと晴れ着を着せてやれた親の気分です。
まだまだ未熟な店、揃っていないものがたくさんあります。ゆっくりではありますが、ひとつひとつ大切に揃えていきたいと思います。心尽くしの晴れ着を誂えるように。
ゴールデンウィークただ中、皆様、どのようにお過ごしでしょうか。「しののめ寺町」は通常通り営業しています!
店を始めて変わったことはたくさんありますが、時間の自由がきかなくなったことは大きな変化の一つです。旅好きな私でしたが、出かけることが難しくなりました。そんななか、お客様のお話を伺うことは、なによりの楽しみです。
桜が咲けば桜の様子を、紅葉すれば紅葉の様子を、ご覧になってきたばかりの興奮と共に、口々にお話しくださいます。美しさと共に、その場の賑わいまで伝わってくるようです。お話は京都各地、あるいは他府県にまで及ぶこともあり、店に居ながらにして、行ってきたかのような、見てきたかのような気分を味わわせていただいています。時に、一日ではとうてい回りきれない名所を巡る日も。(笑)
昨日のこと、長野県松本から日帰り旅行の男性のお客様が来られました。レンタサイクルであれこれお買い物の様子です。4月27日、上高地では開山祭が行われたそうです。山開きしたばかりの穂高連峰に、明日、登る際に持参するのだと、じゃこ山椒と塩昆布をご購入くださいました。おにぎりのお供に、山仲間へのサプライズとのことでした。京都でのお買い物の目的がしのばれ、遊び心満載の登山、お話を伺うだけでゾクゾクしてしまいました。
2012年10月18日のブログ「もう一度 立ちたい場所」で書きましたが、穂高は、時間が出来たら是非もう一度行きたい場所、眺めたい光景です。といっても私の場合、ロープウェイで登るのですが。
最近も雪が降ったとのことで、完全冬装備で登ると話されていました。うちのじゃこ山椒と塩昆布は、今日、どんな光景に出会っているのでしょう。今朝から、想像しては、ワクワクしていました。私が行けるのはまだ先ですが、一足先に行った気分を味わえました。しかも実際には登れそうもない高みまで、しかも私の知らない楽しい仲間と。
うちのじゃこ山椒と塩昆布、ご近所はもとより、全国各地に持ち帰られます。時に海外にご持参いただくことも。お客様からは、その先々での様子をお聞きかせいただきます。私自身がその場に居合わせるわけではありませんが、目の当たりにしているような不思議な感覚に陥ります。
心は自由だなと思います。
体はなかなか自由に動けない毎日ですが、心は自由に旅してくれています。これからも様々なお客様のお話を伺いながら、一人の人生では行き切れないくらい、いろいろな場所に出向きたいと思っています。
まだまだ修行が足りないなぁ、そう思うことはしょっちゅうですが、なかでも、このところ連日「ああ、またぁ」と思うことが 一つ。
自宅から店へは地下鉄で通っています。「丸太町」で降り、竹屋町通りを東へ。突き当りに西国三十三ヵ所巡りの19番札所「行願寺」があります。遠くに見える山門を目指して歩くのはすがすがしい気分です。
本堂には美しい観音様がいらっしゃいます。もちろん通りからは見えませんが、山門の向こうに「観音」と書かれた赤い提灯が覗きます。これを見ると、あぁ、観音様がいらっしゃるのだなぁと思い、心でそっと手を合わせます。開店以来の毎朝の習慣です。
もう数週間前になるでしょうか、屋根の修復のため、山門が白いシートで覆われてしまいました。毎朝、欠かさずやってきた習慣ですが、以来、すっかり忘れがちになっています。うつむきがちに歩いていて、無意識に角を曲がり、気づけば店の前。シートに覆われた行願寺を振り返り、「あぁ、また忘れたぁ…」とため息をつく毎日です。
見えぬけれどもあるんだよ
見えぬものでもあるんだよ
金子みすずの詩「星とたんぽぽ」の有名な一節です。
かんじんなことは、目に見えないんだよ
星の王子様も言っています。
シート一枚のこと、その向こうの観音様はなんら変わりありません。なのに、見えなくなったとたん、ないものになってしまっている。
まだまだ修行が足りないなぁ。
古来より、こんな民衆のために、時の権力者は寺院を建立させ、仏像を彫らせたのかもしれません。形あるものを作り、拝むことを忘れないようにと…。歴史が苦手な私の勝手な想像ですが。(笑)
店を開いていると様々なお客様が来てくださいます。通りかかりにたまたま入ってくださる方、うちを目指して来てくださる方、何十年も会っていなかった知人、ちょっとした縁で知り合った方…。まるで目に見えない糸が張り巡らされていて、見えない力で手繰り寄せられたのではと思うことも。見えないものが見える瞬間です。
一方で、そこにあっても見逃しているもの、見たくなくて見過ごしていることもあるような。思えば人の見え方は千差万別で、同じものを見ていても、実は全く違うものを見ているのかもしれません。
まだまだ修行の足りない私ですが、見えるもの、見えないもの、自分の眼でしかと見ていきたいと思います。
明日、開店一周年を迎えます。写真はちょうど一年前の今日、2012年3月15日のブログに載せた写真です。毎日愛飲(?)していた強力ドリンク剤の空き瓶を撮っています。
とにかく開店ありきで設定された開店日、あまりに短い準備期間のなか、心身ともに極限まで疲れていました。店は開いたは死んでもた…、なんてことになるのではと不安に思いながら、一方で、たとえ死んでも店は開けねばと強迫観念に駆られ…。思考はもう錯乱状態、開店前日のブログを読むと、もう泣きが入って、悲鳴が聞こえそうです。
そうはいっても、この写真、瓶の並び具合といい、色調といい、なんかいい感じではないでしょうか。追い込まれている割には「あそび」があって、今見ると笑ってしまいます。
ともあれ、死んでまうことなく生き永らえ、健康で今日の日を迎えることができたのは、神様のご加護でしょうか。至らないことばかりだった店も、多くの方のご支援のお蔭で、少しずつではありますが、店らしくなってきたように思います。
一周年というと、皆さん、「もう一年? 早いねぇ」と仰います。私にはとても長い一年でした。目まぐるしい変化と、あまりにたくさんのことがある毎日、思い返すのも追いつかないくらいです。
歳をとると、よく昔話をするようになるといいます。同じ話を何度もするとか。私がおばあさんになるまで生きていたとしたら、この一年のことを繰り返し思い出すのではないでしょうか。幸い、思い出しても思い出しても飽きないくらい、たくさんのエピソードがあります。しかも大変だったはずの出来事も、この写真と同じく、なんか笑ってしまう出来事にすり替わっています。思い返すのはおばあさんになってからの楽しみに取っておき、今しばらくは先に向かって邁進することにしましょう。
ゼロからのスタートも、一年という礎が出来ました。おばあさんになったときに思い出すのが楽しくって仕方がないような、そんな毎日をこれからも積み重ねていきたいと思います。
皆様、今後ともよろしくお願いします。
一年生になったらぁ
一年生になったらぁ
友達100人でっきるかなぁ
しののめ寺町のフェイスブックで、「いいね」を押してくださった方が、きのうで100人になりました。「いいね」を頂戴したお一人お一人の皆様、ありがとうございます。
今さら語るまでもないことですが、インターネット上の情報の広がる速さ、届く範囲の広さは、想像を絶するものがあります。ネット販売であっという間にヒット商品が生まれ、一人のちょっとしたつぶやきが大騒動を巻き起こし、芸能人のブログが炎上し…。そんなニュースに驚くこともなくなったこのごろです。
けれど、しののめ寺町の開店にあたり、この一年、インターネットの世界と親密に付き合うなかで気づいたのは、そうしたことはほんの一握りの出来事に過ぎないということでした。
この思い、この情報が、広く、早く、広まって欲しい。そう願いながらホームページやフェイスブックで発信をするも、現実は遅々とした歩みです。次の日も、また次の日も、同じことを願いながら発信を続ける。なかなかに地道な作業です。現実は、そういう人やお店が大多数なのではないでしょうか。
時に歯がゆさを感じながらも、それくらいの方が、伝えるべき人に正しく伝わっていくのかもと気を取り直し、こうした作業を私自身が楽しんでいることに気づき、またパソコンに向かう毎日です。
100という数もインターネットの世界では取るに足らない数字かもしれません。けれど私にはとても大きな数字です。
ちなみに100人目に「いいね」を押してくださったのは、フェイスブックのマニュアルとして、いつも手元に置いていた本の著者、鬼追 善久氏です。きのう「フェイスブック活用講座」を受講した際の講師が、偶然にも鬼追氏でした。とてもわかりやすい内容のうえに、個別に親身なアドバイスまでいただきました。
頑張ってきたご褒美に「はなまる」をいただいたような鬼追氏からの「いいね」100人目。私の持論「本物のIT関係のひとびとは人情深い」を実感する出会いでした。
101人、102人とお一人お一人増えていっていただけるよう、地道に発信を続けていきます。これからも、どうぞよろしくお願いします。
三年ほど前になるでしょうか、京都の地下鉄で偶然一緒になったトルコ人青年の事を、今でも印象深く思い出します。
京都駅のホームで国際会館に行くにはこちらでいいかと聞かれたのが始まりです。スーツ姿でとても礼儀正しい青年でした。自宅に帰る私と同じ方向、電車に乗り込んだあとも並んで座り、七駅ほどをお喋りをして過ごしました。
大学時代を金沢で過ごし、今は大学で勉強したことを生かして故国で仕事をされているよう。日本語が堪能なはずです。これから国際会議場で発表をするとのことでした。内容を聞きましたが、なにやら難しくて忘れてしまいました。(笑)
「よく勉強されたんですね」と言うと
「はい、一所懸命勉強しました」と彼。
いらぬ謙遜などしない姿に好感が持てました。
「あなたは なにを けんきゅうしていますか?」
彼から突然の質問です。
「け、けんきゅう?」
けんきゅうっていったら、やっぱり研究? ひたすら勉強をし続けてきた彼は、誰でもなにか研究をしているものだと思っているのでしょうか?
私はただの主婦で、ああ、近所の医院で受付の仕事はしています。といっても、ほんの少しの時間ですけど…。私はしどろもどろで答えていました。自分はなにかの研究に打ち込んでいるような人間ではなくて、といって、ただぼうっとしているわけでもないんだと懸命に言い訳をしていたように思います。
よく考えると、彼が日本語の使い方を微妙に取り違えていて、仕事はなんですか? とか、趣味はなんですか? 程度のニュアンスだったのかもしれません。私のあたふたとした答えぶりに、彼も少し途惑っていたようにも見えました。
そうこうするうちに私の降りる駅になりました。彼は慌てて大きなスーツケースの中を探ると、小さな袋を取り出しました。レモンの香りのするオリーブオイルで、トルコではなんにでもかけて食べるとのこと。これを食べるとき自分のことを思い出してくださいと言って、プレゼントしてくれました。
結構長くなってしまった私の人生、それなりに色々なことに打ち込んできました。けれど、いつもなにかしっくりいかないものを感じて退いてしまう、そんなことの繰り返しでした。自分にしっくり合ったものに出会いたい。そう願い、模索することだけは絶えることなく続けてきたように思います。
あなたは なにを けんきゅうしていますか?
そんな私の心に、彼の言葉は強く響きました。私は一体なにをけんきゅうしたいのか…。
もらったオリーブオイルは使うのがもったいなくて、賞味期限ぎりぎりまで置いておき、見るたびに彼の言葉を思い出していました。
あなたは なにを けんきゅうしていますか?
オリーブオイルはほのかにレモンの香りがし、サラダにかけて美味しくいただきました。
不思議な青年だったなぁと、今でも時々思い出します。またもし彼に会ったなら、今度は堂々と答えられそうな、そんな気がしています。
あけましておめでとうございます。しののめ寺町は明日、1月5日(土)から営業させていただきます。本年もよろしくお願いします。
左枠のニュースでも書いていますが、このホームページはJimdoのみんなのビジネスオンラインというサイトで自作しています。開設したのが、ちょうど一年前の1月4日です。ホームページ作成など到底、無理と思っていたのですが、このサイトなら大丈夫と、知人からアドバイスされたのがきっかけです。
このサイト、素人にもわかりやすい仕組みになっていますが、なにぶん初めてのこと。幼子が積み木を積み上げていくような、たどたどしさでした。にもかかわらず、お付き合いくださった皆様、ありがとうございます。
仕事を終え、夕食の片づけを終え、それからパソコンを開くのはきついこともありましたが、かけがえのない時間でもありました。自作のホームページは鏡のようなもの。今の自分が映り、その向こうになりたい自分が浮かび上がります。 厳しくはありますが、向き合うことは大切です。
起業後、様々な業種の方と知り合う機会が増え、店のコンサルティングやホームページ作成など、起業や起業後のサポートをする職業の方がたくさんいらっしゃることに驚いています。お話をさせていただくと、やはり餅は餅屋、その道のプロとして、素人には思いもつかないノウハウをお持ちなんだと感心することしきりです。
プロの方のように、なににつけ上手く事は運びません。遠回りだったり、ときに真逆のことをしていたり。振り返ってみると滑稽に思えることもたくさんしてきました。そうした至らなさに気づけるのも、自分の手で積み木を積んできたからではないか、鏡と向き合ってきたからではないかとと、無理からではありますがそう思い、また自分を励ましているところです。 これからも様々な方のご指導を仰ぎながら、自分たちなりにやっていこうと思っています。
最後に、この一年、無料でサポートしてくださったJimdoチームの皆様、本当にありがとうございました。これからはちゃんと料金をお支払いします。今後ともよろしくお願いします。
今日12月30日、「しののめ寺町」は本年の営業を終了しました。
雨にもかかわらず、多くのお客様にお越しいただき、夕方にじゃこ山椒と塩昆布がきっちり同時に完売! なんとも気持ちのいい一年の締めくくりでした。
3月に開店。生々しい話になりますが、起業にはお金がかかります。今年一年、たくさんのお金が出ていきました。入ってくる間もなく、出いていく一方は、ちと辛い(笑)。 商売をよくご存知の方からは、起業一年目で利益が出るわけはない、と異口同音に言われます。仰るとおり…、です。
寒空に懐も寒いばかりですが、懐のちょっと横あたり、私のハートは何故かほっくほくです。旧知の知人、起業を機に出会った方々、全国、各国からのお客様、この一年になんと多くの方に出会ったことでしょう。両手の指を何度折っても足りません。そのお一人お一人からいただいた有形無形の支え。私のハートには、溢れんばかりの金銀財宝がざっくざくです。
人の宝。
たくさんのお金が出ていきましたが、それを補って余りあるたくさんの人の宝をいただきました。ありがたくって、ありがたくって、もうこのまま死んでも本望のような…。いえいえ、まだ始まったばかり。「しののめ寺町」を一人前の店にすることが、こうした皆様へのなによりのご恩返しのはず。まだまだ死ぬわけにはいきません。
日々の慌ただしさに紛れ、きちんとお礼を伝えられていないことと思います。この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。
皆様、この一年、本当にありがとうございました。
昨年の今日、11月28日は夫が親族の一員として長年、共に働かせていただいた「しののめ」を退職した日です。
その時点で、先のことは具体的になにも決まっていませんでした。ただ食べていくため、実りある人生にするため、起業という決断だけはしていました。
3月9日のブログ「滋賀 坂本 律院」でも書いていますが、滋賀県坂本の律院に立派なあじゃり様がいらっしゃいます。毎日、護摩法要をされていて、何度か出向いたことがあります。28日はお不動さんといって、特にご利益があると聞き、出かけていきました。熱心な信者でもなんでもないのですが、心落ち着かないこの日、じっとしていられなかったというのが本心です。
京阪電車に揺られ、ただぼんやり車窓の風景を眺めていたのですが、坂本駅も近くなったとき、車窓に不意にある映像が浮かびました。それがまさにこの写真、何度か前を通りかかり、気になっていた物件の店構えです。そのとき私の中に、確固たる閃きが走りました。坂本に着くや律院への参道を歩きながら、携帯から仕事中の夫に電話を入れ、昼休みに不動産屋さんに連絡をして仮押さえをしてくれるよう頼みました。
護摩木を奉納し、ただ無心に祈り、少し心が落ち着きました。帰宅後、「しののめ」に寄り、長年お世話になった方々に感謝を伝えると、体から力が抜けると共に、もう前を向いて進むしかないんだと覚悟が出来たように思います。夜はお寿司とケーキで、家族4人のささやかな慰労会をしました。
翌日、さっそく物件の下見をして、一目惚れ。あとは一気に事が進んでいきました。この物件というのが、今の「しののめ寺町」です。大きなお力に導かれて出会えた店だと、いつもいつも思っています。
2011年11月28日、長い、不思議な一日でした。あれから一年、長い、不思議な一年でした。
なんと、私、ラジオ番組にゲスト出演してしまいました。起業して以来、驚くことの連続ですが、そのなかでもダントツの出来事です。
去年、京都府主催の起業家セミナーを受講したことは、このブログでもたびたび書いていますが、番組のパーソナリティーをされている米田明氏は、そのときお世話になった先生です。受講中はもとより卒業後もひとかたなぬお世話になっていて、そのご縁で声を掛けていただいた次第です。
テレビか映画でしか見たことのないスタジオの収録風景、米田先生とアシスタントの武村眞里さんの絶妙の掛け合い、持参のじゃこ山椒を召し上がりながら「しののめ寺町」の宣伝をしてくださるのを特等席で見ながら、私はただただ夢見心地でした。
リクエスト曲をかけてくださるということで、平原綾香のCDを持参し、「Jupiter」をお願いしました。店に向かう道すがら、よく心に浮かぶのがこの曲です。魔物のような不安にさいなまれる時、うまく事が運ばず落ちこむ時、なぜか口ずさんでいます。
Every day I listen to my heart
ひとりじゃない
深い胸の奥で つながっってる
凡人の私は、深い胸の奥でつながっているものがなになのか、わかりません。それでも、なにかにつながっているんだと確信し、不安でありながらも、落ちこみながらも、また進んでいける。そんな毎日の繰り返しだったように思います。
未熟者の私を、まだまだ軌道に乗らない「しののめ寺町」を、こんな華やかな場所に引っ張り出していただき、気恥ずかしい限りです。もったいないくらい、ただただ有り難いです。ひとえに「しののめ寺町」を支え、応援してくださっている方々の後押しのおかげだと、ヘッドフォンから聞こえてくる歌声を聴きながら、しみじみしてしまいました。
愛を学ぶために 孤独があるなら
意味のないことなど 起こりはしない
ちなみに「しののめ寺町」のメールアドレスはjako@jupiter.ocn.ne.jpです。
詳しくは左枠「ニュース」をご覧ください。
今日で10月も終わり、開店から7ヶ月半が過ぎました。 この間、何度となく心に浮かんだのは、 「一年前の今頃は、こんなこと想像もしてへんかったなぁ」 という思いです。 そんな、にわか仕掛けの起業でした。今年の雪景色も桜も夏空も、私の目には去年とは違うもののように映りました。
一年前の今頃というと、そろそろ生活が一変するかもしれないという気配が漂い始めた頃でしょうか。サイコロの目がどう出るか不安におののきながらも、一方で覚悟を決めていかなければならない厳しい時期でした。
結果、起業という「目」が出て、運命が大きくうねり始めました。本当に一寸先のことはわからないものです。いいことも、悪いことも、そのときどきに真摯な姿勢で向き合わねばならないのだと学びました。 この一年は十年分くらい生きた気がしています。
先日のこと、妙齢のご婦人が5人ほど店に入ってこられました。味見をされ、お茶を召し上がり、商品を吟味したあと、「今日は一年後の同窓会の下見、一年後にまた来ますね」と。幹事さんが京土産を用意するのが恒例なんでしょう。「鬼が笑うかな」とにこやかに帰っていかれました。
私、毎日、今日、明日のことで精一杯。一年前の今頃を思うことはあっても、一年後の今頃を思うことなどありませんでした。一年後、「しののめ寺町」がここにあり、じゃこ山椒が陳列棚に並び、店に私が立っている…。それは当たり前のようで当たり前でないことのように思えます。一寸先のことは誰にもわからないのですから。
けれど、わからないならわからないで、そんな一年後をあっけらかんと思い描くのも悪くない気がします。「一年後、お待ちしております」と私もにこやかにお見送りしました。数ある京土産のなかから「しののめ寺町」のじゃこ山椒を選び、またご来店くださるよう、一日一日積み重ねていこうと思います。
10月になり、めっきり秋らしくなりました。
毎朝、地下鉄丸太町駅で降り、店を目指して竹屋町通りを東に歩きます。夏の辛さはもうありません。
開店前から数えると、冬、春、夏、秋と季節が巡りました。つくづく不思議に思います。この道をこんなに通ることになるなんて、夢にも思わなかったと…。
このあたりは静かな住宅街で、なんということもないけれど、人の営みが感じられるいい通りです。なによりの魅力は、西国19番札所「革堂さん」の正門に行き当たることでしょう。毎朝、観音様の懐に導かれていくような、すがしい思いで通っています。
俳優さんが亡くなったときなど、霊柩車が馴染みの劇場の前を通って火葬場に向かう、なんてニュースを耳にすることがあります。願わくば、私も人生最後のドライブ、この道を通ってもらえたらと思っています。自宅近くの葬儀所で葬儀を行い、火葬場に向かうのに、さして遠回りでもなさそう。しかも幸いにも東行きの一方通行です。
革堂さんの前でゆっくり右折し、反対車線にはなりますが「しののめ寺町」の前で数秒停車し、プハァーと小さくクラクションを鳴らしてもらえたら…。私の人生めでたし、めでたし、です。
もし「しののめ寺町」が存続していなかったら…。そのときは、かつてあった場所でもいいんです。ちょっと淋しいですが、それもまた仕方ない。
こんなことを書くと、驚かれる方があるかもしれません。確かに私はいつも死を意識して暮らしているところがあります。けれどそれは決して悲観的なものでないんです。楽しい旅行の計画があると、それまで頑張れる、いつも以上に頑張れる、そんな感覚でしょうか。むしろ励みになるんです。やっぱり変わっているでしょうか。(笑)
棺桶にゆかりの品を入れる、なんてこともあるようですが、私は決して何も入れてくれるなと家族に伝えています。毎日、重い荷物を引きずって通っているこの道、死んでまで荷物はまっぴら。手ぶらが一番です。
などかは降ろさん 負える重荷を (賛美歌312番)
楽チンに横になり、熟練のドライバーの運転で、いつの日かこの道を通れると思ったら、死ぬのもまんざら悪くない。
どこまで生きても心残りは尽きないでしょうが、少しでも心残りなく死ねるよう頑張って生きていこう。そんなことを思いながら、今日も竹屋町通りを歩いています。
店を構えていると、やって来られるのはお客様だけでなく、様々なセールスの方も。ウェブ対応が必須の今、IT関係の方も多いです。パソコンだけでなくスマートフォンにも対応していかなければならない時代のようです。
プロにお願いしたら、低迷している自作のホームページのアクセス数も店の来客数も一気にアップするかも、なんて思います。
けれど、なんせ資金難。当面はなんとか自分で出来るところまでやっていきますと、正直に答えてお断りしています。
どう見ても脈がない客、セールス目当てならそそくさと帰られるところでしょう。それがセールスを度外視して親身に相談にのってくださったりして驚いてしまうことがあります。それも一人じゃなく、二人、三人…。申し訳ないと思いながら、ちゃっかり活用させてもらっています。
ブログを読んでくださっている方の中には、のんきにありがたがって、おめでたい性格だと思われる方があるかもしれません。いつかは成約につながると、下心があるからだと…。
そうかもしれません。でも、やっぱりそうじゃない。
IT関係の方って、クールで、どちらかというと冷徹、なんてイメージを持っていました。IT関係の知り合いが増えるにつれ気づいたことですが、実際は有能な方ほど、ホットで、人間味に溢れています。
皆さん、機械を扱えるかどうかの前に、そこに「なにを」打ち込めるかどうかが大切だと、異口同音に言われます。
私が素人なりに懸命にやっているとわかると、仕事を超えて助けてくださるのは、取りも直さずそうした人間味からでしょう。
こうした皆さん、ますます信頼の篤い、優秀なセールスマン、セールスレディに育っていかれるに違いないと信じています。
この場を借りて、お礼を。ありがとうございます!
このブログでも何度か書いていますが、昨年の秋、10月から11月にかけて、京都府主催の起業家セミナーを受講しました。
その情報誌「クリエイティブ京都M&T」9月号に、卒業生として私の拙文と「しののめ寺町」が紹介されています。興味のある方は京都産業21のホームページからご覧ください。http://www.ki21.jp
当時はまだ起業するかどうか未定の状態で、万一に備えて出来る準備はしておこう、といった感じでした。
初日、教室に入るなり、気後れするばかり。まわりの人が皆、有能でバイタリティ溢れて見えたものです。内容もなかなかにハードでしたが、もう後にはひけません。くらいついていこうと覚悟を決めると、あとは学ぶ楽しさにとり憑かれました。学生時代の再来、よみがえる青春、といったところでしょうか。(笑)
セミナー終了と共に起業が決まり、物件が見つかり、あれよあれよという間に開店の運びとなった次第。それが今年の3月です。そして開店から半年が過ぎました。あまりに目まぐるしい一年。思えば、起業家セミナーが幸運の扉だったように思います。
叩けよ、さらば開かれん
まさか一年後、卒業生代表として原稿を依頼され、自分の店が紹介されるなんて、夢にも思っていなかったことです。人生、なにが起こるかわかりません。
この起業家セミナー、今秋の募集、まだ間に合うようです。このブログを読んでくださっているあなた、起業なんて、と思っているあなた、いかがでしょうか。一年後、どこかの店の店主になっているかもしれませんよ。ホント!
ある日のこと、首からカメラを下げた青年が店頭のポスターをしげしげと眺めています。お味見だけでもと勧めると、理解不能の掛け声とともに数人の青年が集合。台湾からの観光の方のようです。
「コレハナンデスカ?」と、一人が懸命の日本語で質問と思いきや、日本人の通訳さんでした。見た目は区別がつきません。自称、勝手親善大使の私はさっそく店内にご案内。
外国人観光客の多い寺町ですが、お国によっては、ちりめんじゃこの見た目だけで「ノーサンキュー」という方も。台湾の方は違和感はないようです。
そのうちのお一人は、台湾でおにぎりの屋台をされているとのこと。私の拙い英語の説明にも興味津々です。
お味見の後はお茶のサービス、「しののめ寺町」では下御霊神社の名水でいれたお茶をご用意しています。またまた拙い英語で説明をするも、「これは神の水です」なんて怪しげな商法のうたい文句のように。
「彼らは漢字がわかりますから、その説明書きを見せたら通じますよ」と通訳さん。半信半疑で説明書きを差し出すと、「おぉ~」と一斉に納得の声が上がりました。
印籠をかざす黄門さんの気分です。
「日本茶、口に合いますかね?」と通訳さんに聞くと、
「彼らもお茶を飲む習慣がありますから大丈夫です」とのこと。
反応はビミョーでしたが、味わいながら飲み干してくださいました。
じゃこ山椒をいくつかご購入、店内外の写真をたくさん撮って、「ありがとう」と帰って行かれる後姿を見送りながら、「異文化交流やなぁ~」と一人、悦に入る私。
けれど異文化というより共通点の多かった彼ら、思えば同じアジアの仲間やん、と気づいたことでした。
ロンドンオリンピック、ずいぶん盛り上がっているようです。
選手の活躍と共に、観客席から声援を送るご家族の姿がまた感動を呼ぶんでしょうね。
スポーツ選手の親ならではの気苦労も多いでしょうが、成人を過ぎた我が子になりふり構わず声援を送れるというのは、やはり幸せなことだなぁと思います。
スポーツ選手の親でない私が、我が子になりふり構わぬ声援を送ったのは、確か小学校の運動会が最後だったのではないでしょうか。中学ともなるともう思春期の入り口、疎まれそうで自粛していたように思います。
声に出さずとも、我が子への力のこもった応援は、ときに逆効果になることもあるようです。いっそ応援なんかしない方がいいのでは、なんて思ったことも。
「しののめ寺町」は家族四人でやっています。
農業なら三ちゃん農業。
とうちゃん、かあちゃん、にいちゃん、でしたっけ???
小学校の社会で習いましたね。
漁業なら親子船、兄弟船。
なんだか演歌の世界みたいです。
かあちゃんとしては大漁旗でも振って声援を送りたいところですが、この至近距離。バッサバッサとうるさくて仕方ないことでしょう。やっぱり自粛するのが賢明です。
お子様ランチ並みの小旗を心に携え、目立たぬように時々振ってみる、なんてくらいが、ちょうどいいのかもしれません。
8月に入り、厳しい暑さが続いています。外を歩いている人もまばらなような。無理もありません。
せめて少しでも涼を感じていただけたらと、店先に水瓶を置きました。数年前、滋賀県信楽の陶器市で購入したものです。
たっぷりの水を張り、ホテイアオイを浮かせ、金魚を泳がせ…、といきたいところですが、金魚は無粋ながらプラスチックの作り物です。
店の中から通りを見ていると、通りかかった方が珍しそうに覗き込んでおられたりします。思惑が当たったようで嬉しいような、本物と間違われていたら申し訳ないような…。
私もついつい外に出ては、金魚は元気に泳いでいるかと覗き込んだりしています。
狭い水瓶の中で泳ぐ「なんちゃって金魚」を眺めながら、心は某老舗和菓子屋さんの立派な日本庭園の池で悠々と泳ぐ鯉を思い描いていたりして。
作り物とわかっていても、金魚の姿に憩っている自分に可笑しくなります。
起業以来、ずいぶん生活が変わりましたが、なかでも変わったことといえば、多くの人との出会いのチャンスが増えたことでしょうか。
大小様々の「異業種交流会」なるものがあり、誘われると出かけていくようにしています。業種は軟らかいのから、お堅いのまで。ただし大企業の方はおられません。一人で、あるいは数人規模の企業の方がほとんどでしょうか。毎回、多彩な方たちに出会えます。
初対面の方と手当たり次第に名刺交換…、こういうのって私は苦手だと思っていました。なにしろ趣味がひとり旅。できるなら秘境の地に籠って日がな一日、読書をして暮らしたい、そんなことを夢見ているような人間ですから。
そんな私ですが、今は宣伝が命。「しののめ寺町」のためと、出かけていたつもりでした。ところが、これ、結構、楽しいんです。
常々感じていたことなのですが、人には大別して、「開いている人」と「閉じている人」がいるように思います。
例えば、道で人に会って挨拶を交わすとして…。
「開いている人」は、たとえ名前は知らなくても、顔見知りというだけで笑顔で挨拶をしてくれて、たちまち互いの心が共鳴するのを感じます。
「閉じている人」は、よくよく知っている仲でも、互いの挨拶が届き合わないようなもどかしさを感じ、心がカクカク軋みます。
異業種交流会で出会う方たちは、一人残らず「開いている人」です。
パチンコはずいぶん昔に数回しかしたことがありませんが、チューリップと言うんでしょうか、玉が入ると、受け皿が開いて、玉がじゃんじゃん引き込まれていきますよね。皆さん、そんな感じ。至近距離に近づいただけで、両手を広げて受け止めてくださるような懐の広さ、ウェルカムな雰囲気を持っておられます。
ビジネスのため、と言えば、もちろんそれもあるでしょう。けれど、決してそれだけじゃないと思うんです。なぜって、心地良く感じるんですから。
商売は決して一人では出来ない…、皆さんがよく口にされる言葉です。
商売は厳しく孤独なものですが、だからこそ人の情けもよくわかる。
そんな経験をしてこられた方たちですから、新参者の私のことも優しく受け入れてくださるのでしょう。
私も目下、全開です!
開店時にはたくさんのお祝やお花を頂戴しましたが、お酒もたくさんいただきました。
縦長の箱を斜めに抱えて入ってこられるや、すっと差し出される姿は、皆さんとても様になっていました。男性なら渡哲也、女性なら高島礼子に見えたものです。
さっそく飲んでみると、これが美味しい! 以来、毎晩、夕食時に冷やでいただいています。下戸のためぐい飲みに一杯ですが、すっかり日本酒の魅力にはまっています。
日本酒といえば、じゃこ山椒にも塩昆布にも欠かせないものです。
開店に当たり、調味料について改めて勉強しましたが、日本酒がいかに重要な役割を担っているか再認識したところです。
ちりめんじゃこや昆布が主役なら、日本酒はいぶし銀の名脇役というところ。
うちの日本酒、寡黙ながら主役を盛り立て、いい仕事をしてくれています。
調理場の中央にでんと置かれたその姿は、じゃこ山椒や塩昆布が炊き上がるのを、じっと見守ってくれているようにも見えます。頼もしい存在です。
ミニミニギャラリーで紹介しているように、飲み終わった瓶を使って店内にディスプレイしています。日本酒党のお客様と会話が弾むことも。そんな私たちをまた黙って見守ってくれているような。ホント、寡黙な名脇役です。
早いもので7月になりました。
さかのぼりますが、皆さんは6月30日に和菓子「水無月」を召し上がられたでしょうか。
お彼岸のおはぎ、十五夜の月見団子など季節の和菓子は、美味しい思いをしながら手軽に風流も味わえ、なんといい習慣かと思います。
特に夏越の意味合いを持つ水無月は、夏が苦手な私には欠かせないもので、
これで夏を乗り切れる!
と、毎年、自己暗示をかけるように、気合を入れて噛みしめています。
残念ながら二年ほど前に廃業されましたが、買うのはいつもご近所の和菓子屋「親玉堂」さんでした。こじんまりと風情のある店構えで、通りかかると、もち米を蒸すいいにおいがしてきたものです。カランカランと下駄の音が聞こえたと思ったら、「おはよう!」とご主人に声を掛けられることも。
和菓子はどれも、くせのない上品な甘さで、年配のご夫婦の人柄とともに、地元で愛される和菓子屋さんでした。
今は行きつけの店はなく、今年の水無月は出かけたついでにデパ地下で買いました。それなりに美味しかったのですが、なにか味気ないものが。
店先での奥様とのなんでもない会話、出来立て手作りならではの美味しさ…、思い出されるのは、やっぱり「親玉堂」さんの水無月です。味の記憶は味覚だけにとどまらず、その向こうに、えもいわれぬ情景が伴うものなのですね。
自分が店を開いて、「親玉堂」さんがどんなにか素敵な店だったかを実感しています。
5月2日のブログに書きましたが、フェイスブックを始めて、2ヶ月が過ぎました。
フェイスブックというのは…、
ごく簡単に説明すると、自分の素性を明かしたうえでインターネット上に登録し、承認し合った者同士が情報を送受信できる仕組み、というのでしょうか。
起業家セミナー仲間から恐る恐る始めた小さな輪が、友達の友達は友達方式で、少しずつ大きな輪に広がりつつあります。商売上、必要に迫られて始めたつもりが、私自身がすっかり楽しんでいる状況です。
各方面で活躍されている皆さん、夜もお元気ですが、朝もお元気。仕事前の早朝から書き込みをされている方も。
締めくくりは、
みなさん、今日も一日、元気で過ごしましょう。
なんて言葉が多いです。
決まり文句のような言葉ですが、書いた方の笑顔やお仕事ぶりが目に浮かび、読むたびに心に響きます。
何年前からでしょう、いつの頃からか、私は毎朝、心の中で
今日も一日、元気で頑張ろう!
と唱えるのが習慣になっています。
辛いときほど、心の中で拳を突き上げて、声高に叫んできたように思います。
人からは「いつも元気やね」と言われ続けて何十年。
ちゃうねん、ちゃうねん…、
と心で思うも、この言葉の効果だったのかもしれません。
今日も一日、元気で頑張ろう!
店を始めた今、やっぱり、毎朝、そう心で唱えて一日をスタートしています。
以前と違うのは、フェイスブック仲間の皆さんの声が、ハミングのようにかぶさっていることでしょうか。
開店から3ヶ月近くが過ぎました。
少しずつお馴染みさんが出来つつあり、その中にはご近所の高齢の方も。
杖を突きながらや、手押し車を押しながら来られては、店内の椅子に腰掛けてしばしお喋り、なんてこともよくあります。
ふと、この光景、どこかで見たような、と不思議な思いに駆られることがあります。そんなこと、あるわけないしなぁ、あぁ、そうそう、開店前に思い描いていた光景やんと思い至り、さらに不思議な思いに…。
じゃこ山椒も塩昆布も、スーパーマーケットに行けば手軽に安価で買うことが出来ます。高齢のお客様にとっては、日々の買い物のついでに済ませれば便利なことでしょう。それでも「これは、やっぱり、あの店で…」そう思って足を運んでいただける店でありたい。味はもちろんのこと、そこでのお喋りがまた楽しい、そう思っていただける店…。構想中に私が思い描いていた店の光景です。
そのままの光景を、今、目の当たりに出来て幸せに思っています。
写真はご近所の玄関脇の紫陽花です。こんな季節になっていたのかとビックリ。
店作りに奔走し始めた去年の秋以来、紅葉も桜も味わうことなく過ごしてきました。
また少しずつ、季節の移り変わりを楽しむ余裕を持ちたいと思います。
うちにご来店くださるお客様の半数近くは他府県の方でしょうか。観光の方がほとんどですが、なかには京都の病院に通っているという方が時々いらっしゃいます。
近郊から月に一度通院しているという方、遠方のため京都に部屋を借りているという方、なかには入院中で外出許可をもらってきたという方も。
ご本人は食事制限があり食べられないけれど、家族にと言って、じゃこ山椒を求められる姿に、かける言葉が見つかりません。
今はもう亡くなった私の実母は、長年、入院生活を送っていて、私は一人、慣れない運転で面会に通いました。
私が娘であることをとうに忘れた母に会うのは気の思いことでしたが、途中に美味しい豆腐屋さんがあり、帰りに買って帰るのがせめてもの慰めでした。夏には冷奴、冬には湯豆腐にして食べた豆腐は、美味しくも切ない味でした。
「おいしい、おいしい」
と、ことさら声に出して食べていたように思います。
病気は本人にとっても家族にとっても辛いものですが、そんななかでも人はちょっとした隙間に楽しみを見つけられるものなんですね。
この道を 通る日いつも 豆腐買う
思いのままを五七五にして新聞の川柳に投稿したところ、佳作に選ばれた、なんてことも。ビギナーズラック、ってやつです。
決して楽しくはない病院通い、それでも皆さん、なにかしら楽しみを見つけられている様子がうかがえます。
写真は近くのスーパーの軒先で見つけたツバメの雛。たくましい生命力、あやかりたいものです。
3月21日のブログで書いていますが、私、滋賀県の湖北、木ノ本の観音様が大好きなんです。
地下鉄の駅を降りて竹屋町通りを店に向かうとき、正面に西国三十三カ所巡りの19番札所、通称「こうどうさん」が見えます。毎朝、心の中でそっと手を合わせ、木ノ本の観音様のことを思います。
またゆっくりと訪ねたいと思いながら、まだ時間がつくれずにいます。
私が木ノ本好きなことを知る友人が、きのう、木ノ本までドライブしてきたと、店にお土産を届けに来てくれました。袋をのぞくと、「つるや」の「サラダパン」が!
木ノ本の北国街道沿いに古くからあるパン屋さんの名物パンです。少し甘めのコッペパンの切り目にマーガリンが塗ってあり、そこにマヨネーズで和えた刻んだたくあんが挟んであるんです。そう、漬物のたくあんです。
パンにたくあん、なんてアバンギャルドな取り合わせでしょう。知らずに初めて食べたときは仰天しましたが、これが病み付きになる美味しさなんです。
久々に食べたつるやのサラダパンは変わらぬ美味しさで、
「ああ、これこれ」
と、うれしくなりました。
風情ある街道の佇まいや、昔懐かしい雰囲気の店内の様子まで目に浮かぶから不思議です。
「しののめ 寺町」も暖簾分けから2ヶ月。
馴染みのお客様が、ご試食用のじゃこ山椒を一口召し上がり、
「これこれ、この味」
と言ってくださるのを聞くと、ほっとします。
そして、お客様がよく仰るのが、
「このあたり、風情のある街ですね」
という言葉。
変わらぬ美味しさを。
そして、うちのじゃこ山椒を召し上がっていただくとき、寺町の風情ある街並みを思い出していただける。
そんな店になれる日を夢見ています。
開店して今日でちょうど2ヶ月が経ちました。一軒の店を軌道に乗せることの難しさを痛感しています。当たり前といえば当たり前のことですが。
「自分で自分をほめたい…」
と言ったのは、マラソン選手の有森祐子さんでしたっけ。
42,195kmを走り終え、メダルを獲得したのですから、日本中が納得の喝采を送ったものでした。
「私、結構、頑張ってるんやけどなぁ」
と思うこともありますが、仕事もプライベートも、なにぶん結果が出ないことには自分をほめるわけにいきません。叱咤激励ばかりの毎日です。自分をほめられるような日が、いつになったら来るのやら。
それでも人生最後の日には、結果はどうあれ、自分をほめようと決めています。
渾身の力を振り絞り、「ようやった!」と自分に声をかけてやりたい。
その日まで、不本意な途中棄権をしないよう、時には歩いたり、給水したりしながら、ゴール目指して邁進していく所存です。
子供の日が終わって、次は母の日でしょうか。
デパートやテレビコマーシャルでは、母の日、母の日と賑やかです。
お母さんのいない子供もいるだろうに、子供のいない女性だっているだろうにと、この時期なんだか気分が悪くなるのは、私が天邪鬼のせいでしょうか。
そんな私も店を開き、やっぱり「母の日企画」をしています。(~_~;)
店頭で商品を選ばれるお客様、袋入りを一つ手に取り、
「ああ、○さんにも」
と言って、もう一つ。
「そうそう、△さんにも」
と言って、さらにもう一つ。
なんてことが、ままあります。
人って、物を贈ることが好きなんだなと思います。
喜んでくれる人の顔を思い浮かべるのは、贈る側にとっても楽しいことです。
思えば一年365日、毎日が贈り物日和かもしれません。
5月13日、母の日にかかわりのある人も、ない人も、それなりの一日を。
今日は子供の日。
地下鉄を降りて店に向かう途中に、京都市の子育て支援総合施設「こどもみらい館」があります。いいネーミングだなと、いつも思うのですが、今、大きな鯉のぼりが掲げられ、ますますいい感じです。
じゃこ山椒って、子供さんは苦手かと思いきや、意外にも好評です。
「もっと、ちょうだーい」
と、ベビーカーから試食用のじゃこ山椒をリクエストするお子さんも。
「子供たちが大好きで」
と、たびたび買いに来てくださる若いお母さんもいらっしゃり、賑やかな食卓が目に浮かぶようです。
私は子供の頃、食が細く、好き嫌いも多くて、自宅でも学校の給食でもいつも居残り組でした。そんな記憶は、今もトラウマとなって残っています。
彼ら、彼女らの幼い日の楽しい食卓の記憶に、うちのじゃこ山椒がわずかでも花を添えることができたなら、こんなうれしいことはありません。
私がおばあさんになり、
彼ら、彼女らが大きくなって、
「わたしゃ、あんたたちが、こんなちっちゃい頃から知っているんだよ」
(突然、ちびまるこちゃんのおばあちゃんの口調になる)
なんて言っている光景を妄想して、一人、ほくそえんでいます。
開店日前日になって、試食用のじゃこ山椒と塩昆布を入れる器を買い忘れていることに気づきました。幸い貸してくださる方があり、当面お借りすることに…。
先日、ようやくデパートに買いに行くことができました。食器売り場で探すも、ピンとくるものがありません。なにせ佃煮屋、和風を基調にと心がけていますが、ありきたりのものでは飽き足りません。
お鍋売り場に移って、こんな可愛い器を見つけました。ル・クルーゼのものです。
ル・クルーゼといえば、性能もデザインも優れたフランスの有名なお鍋メーカーです。憧れながらも、今まで手を出せずにいました。
店員さんに用途を聞いたところ、さすがル・クルーゼ。ココットやプリン作りに、ディップ入れに…と、お洒落な料理の名前が並びます。まさか佃煮屋の店頭で、じゃこ山椒と塩昆布を入れて置かれるとは想定されていないでしょう。
漆塗りのスプーンとフォークを添えてガラスのサンプルケースの上に置くと、これが意外に合うんです。お客様にご試食を勧めるたびに、可愛いフォルムを眺めてはにんまりしています。
突然ですが、どうも私は霊感が強いようです。
霊が見えるとか、金縛りにあうとかではなく、なんとなく気配を感じる、というやつです。気のせいと言われればそれまでですが…。
今回の起業に当たり、あまりに怖くて不安で、神様仏様にとどまらず、空といい大地といい、目に付くもの全てに手を合わせてきたように思います。
そんななか、今は亡き縁あった方の顔が浮かぶことがありました。
仲村先生もそのお一人です。
夫は大学時代、D大学のソフトテニス部に在籍していたのですが、仲村先生はD大学の先生であり、部の監督、そして私たちの仲人さんです。
残念ながら三年前に他界されましたが、存命中はひとかたならぬお世話になりました。三人の娘さんがおられましたが、厚かましくも私も娘の一人のような気でいたものです。
今回、D大学ソフトテニス部関係の皆様には絶大なご支援をいただいています。
私は密かに、仲村先生が空の上から号令を掛けてくださっているに違いないと確信しています。なにしろ監督ですから…。
先生がお元気だったら、なんて仰ったでしょう。
きっと、なにも言わず、ただ目を細めて笑っておられるんじゃないかな、そんな気がしています。
開店祝いにと本当にたくさんのお花をいただきました。
一生分、いえ、来世、来々世分…、それでもあり余るほどのお花で、ありがたいかぎりです。
生花のアレンジメントは枯れ始め、胡蝶蘭などの鉢植えのものだけになりましたが、まだまだ店内花盛りです。
なかでも苔玉の桜が、今満開で、お客様の目を惹いています。
粋な贈り物の主は、先斗町の居酒屋さんです。
夫が独立するか留まるか五分五分のとき、たまたま府民新聞で「起業家セミナー受講生募集」の記事を見つけました。無駄に終わるかもしれないと思いながらも、もしもの時に備え応募。結果、講師の先生方、40人近い受講生たちから、大きな助けをいただくことになりました。
桜の贈り主さんはこのときの仲間です。
年齢、性別、分野と様々ですが、皆一様に前向きで、ユニークで、起業に伴うリスクよりも、醍醐味を楽しんでいる様子。それぞれ心に一輪の桜のつぼみを抱いているような、夢いっぱいの人たちでした。
開店はしましたが、まだまだこれから。本当のサクラサクを目指して精進していく所存です。
開店して10日ほどです。
「おいしかったよ」と二度三度、いえいえ四度五度と訪れてくださる方もあり、心底ほっとしています。
今日、一人で来られた中年の男性、お勘定を済ませて商品をお渡しすると、
私の目を見てひとこと、
「おきばりやす」と…。
お客様の反応にビクビクし、自分で感じている以上に緊張した毎日を送っているのでしょう。
さりげない言葉でしたが、
なんか…、
とても…、
胸に沁みました。
またご来店くださることを祈っています。
今日は寒い一日でした。
そんななか、大きなペットボトルをいくつも提げたお客様がご来店。
下御霊さんに名水を汲みに行かれるとのこと。
下御霊さんといえば、店からほんの数メートル北にある神社です。
地元の氏神様にまだご挨拶をしていなかったことに気づき、帰りに寄ってみました。
鳥居をくぐるとすぐに名水を汲んでいる方の姿があり、本殿脇の大きな紅梅の木が満開でした。
この地に店を構えることが決まって以来、寺町商店会はじめ地元の皆様にはとても友好的に迎えていただき、感謝しています。
「近くに出来てうれしいわ」と、ご近所の方がたくさん来店してくださっています。
5月には下御霊さんのお祭りが盛大に行われるそうです。
新参者の私たちですが、その頃にはすっかり地元に溶け込んで、お祭りに参加できたらいいなぁ、なんて思っています。
巣立ちの季節、晴れ着の親子連れや学生さんの姿をよく見かけます。
私たちもこの春、起業という大きな節目を経験し、開店して9日が過ぎました。
打ち合わせやあれこれ、連日、奔走してきましたが、今は店に詰める毎日です。多くの職人さんや業者さんが出入りされていた店の奥の作業場も、気づけば私たち家族だけ。
開店日に向けて走り続けてきたので、今、ちょっと、祭りのあとのような虚脱感も…。
多くの方に引っぱっていただきながら、ここまで辿りつけましたが、これからは、なんでも私たちで決めていかなければなりません。
暖簾分けという立場、引き継ぐべき部分と、変えていくべき部分を見極めながら、自分の頭で考え、自分の心で感じ、自分の体力の許す範囲で、私たちらしい店作りを模索していきたいと思います。
巣立ったばかりのヒナです。あたたかく見守ってくださることを切にお願いします。
私は店まで毎朝、地下鉄で通っています。
烏丸線の丸太町駅で降り、竹屋町通りを東に向かって歩きます。
京都は碁盤の目になっているとはいえ、ところどころ行き止まったり、蛇行したりしています。竹屋町通りも寺町通りでいったん行き止まり、その先には西国三十三ヶ所巡りの19番札所、通称「こうどうさん」があります。
右に御所南小学校、左に裁判所の桜並木の通りにさしかかる頃には、真正面にこうどうさんの門が見えてきます。
顔を上げて歩いていると、まるで本堂に吸い込まれていくような不思議な錯覚に陥ります。寺町通りの角まで来ると、観音と書かれた大きな赤い提灯がのぞきます。
私、実は観音様の大ファンなんです。それも、山里のひなびたお寺にひっそりと佇んでいらっしゃる観音様が大好きです。
滋賀の湖北、木ノ本あたりには、こうした観音様が多くいらっしゃり、よく通いました。京都駅から新快速で90分、木ノ本の駅に降り立つと、「観音様のお導き」と書かれたポスターが迎えてくれます。
寺町なんて素敵な街に店を構えられるとは思ってもいませんでした。もしや、木ノ本の観音様たちが、こうどうさんの観音様に引き合わせてくださったのかも、なんて思っています。
起業を決めてから開店まで、本当に短い準備期間でした。忙しさのあまり、家族皆、決して体調はよくありません。
観音様にもう一つお願いが…。
どうか、家族皆が健康でいられますように。
このところ、テレビや新聞に目を通す時間もなく過ごしていました。
夕べ、たまたまテレビをつけると、寝台特急日本海のラストランに多くの人が詰め掛けたとのニュースが。大阪から青森を15時間かけて走る夜行電車です。
3年前、この電車に乗ってひとり旅をしました。目的は弘前で「森のイスキア」という宿泊施設を主宰する佐藤初女さんに会うことでした。
その話はまたの機会にするとして…。
ひとり旅大好きな私も、初めての寝台車に少し緊張して乗り込こみましたが、お隣は素敵な老紳士でした。やはりひとり旅が好きな方で、これまで行った旅先での楽しいエピソードをたくさん話してくださいました。
このままずっと電車に揺られながら、話を聞いていたいなと思うほど楽しい時間でした。
できるなら、もう一度会いたいなと、今でも思い出します。
栃木の方ですが、旅好きなら、京都に来られることもあるかも。
うちの店をひょっこり訪ねてくださらないかな、なんて奇跡を夢見ています。
去年の11月28日に夫は退職。
以来、物件探しから、改装、開店準備と、いいご縁に恵まれ、とんとん拍子で進んできました。それにひきかえ、自分たちの中身が伴わないことの不安がいつもつきまとっていました。
まわりの方たちの支援に応えられるよう、精一杯やってきました。
ここ数日は、行きつけのドラッグストア一押しのドリンク剤を飲んで頑張っています。
それでもまだまだ行き届かないところばかりです。
そうはいっても、もう幕が開くぅ、どうかご容赦を!
今日は大安、当初、この日を開店日にするつもりでした。
けれど、定休日にするつもりの水曜日でもあります。
よって、開店日を先勝の二日後にし、大安の今日は折り込み広告を入れる日にしました。
起業を決めてから、やたら暦が気になります。
折り込みは、店舗を構える寺町周辺のみ。
なので、北区に住む我が家には入らず、私はデザインは決めたものの、当の広告を見ていません。
果たして、どんな感じだったのでしょう???
「においの出る業種は嫌がられます」
店舗物件を探している時、どこの不動産屋さんでもまず言われたものです。
じゃこ山椒を炊く際、やはり醤油や山椒のにおいがたちこめます。私たちにはいいにおいでも、そこは嗜好のもの、嫌なにおいと思う方もあるやもしれません。
そこで改装工事に入る際、なにはなくても、ダクト(換気扇)だけは最大限のものを取り付けてもらうようお願いしました。
改装工事中、様子を通りから眺めていると、あたりからはいろいろなにおいが漂ってきます。パンを焼く香ばしいにおい、ケーキの甘いにおい、そばの出汁をとるかつおのにおい、弁当屋さんの日替わり定食でしょうか、魚を焼くにおい、風向きによってはお茶の香りまで…。
こうしたにおいを嗅いでいると、人の営みが感じられるようで、うれしくなってきます。
そして、今日、我が店舗にも初めてにおいがたちこめました。
うちの二代目、長男が、父親の指南のもと、初めてじゃこ山椒を炊いたんです。
最大限のダクトとはいえ、外ににおいが漏れることもあるかと思います。
「いいにおい」
と思っていただけるよう、修行していくことを祈っています。
うちの家族は皆、アナログ人間です。
数年前、世の流れと、家人達の性格を鑑み、これはもう私がやるしかないと決意。パソコンのハード面を勉強する教室に通いました。
意味不明の文字が並ぶ分厚いテキストと格闘、ついにパソコン整備士2級を取得しました。ずいぶんマニアックな内容でしたが、今になってやっておいてよかったと思うことしきりです。なにしろ起業にWEB対応は必須ですから。
そうは言っても、資格を取っても実践に役立つとは限らないのは、どの分野も同じこと、各種機器と取扱説明書を前に唸る毎日です。
そんな私の横で夫がポツリ。
「やっぱりアナログが一番や」
もおぉ!
35年前、現在94歳になる母が「しののめ」を創業した時、夫は大学生でテニス三昧の日々。その後、家業に加わるも、創業時のノウハウは知りません。
母の記憶を頼るも、時代は様変わり、右往左往することばかりです。
そんな中、なにより心強かったのは、創業時からお付き合いのある仕入先の方々からのアドバイスでした。
開店間近の大安の今日、そんな仕入先の皆さんに、改めて開店の報告とお礼に回ってきました。
あいにくの雨でしたが、
雨降って、地固まる
決して平坦ではなかった独立までの経緯を、今日の雨が洗い流し、地固めをしてくれたようにも思います。
古来より、人はいいにつけ、悪いにつけ、ことわざに思いをのせて、しのいできたのかもしれません。
このところ、しきりに思い浮かぶことわざといえば…、
捨てる神あれば、拾う神あり
渡る世間に鬼はなし
です。
雨の日に店先に置く陶器の傘立てを探していたところ、夷川通りによさそうなものが並ぶ陶器店を発見。
どれがいいかと悩んでいると、店番のおばあちゃま曰く、「いくつか持って行って、置いてしっくりいくものに決めたらええ」
私たちのことを微塵も疑う様子はありません。
お言葉に甘えて、第一候補の角型のものと、第二候補の丸型のものをお借りし、店先に置いてみました。
しっくりいったのは、以外にも第二候補の丸型のもの。
もちろん、陶器店に戻って、ちゃんとお勘定しました。
おばあちゃま、私たちが改めて傘立てを車に積み出発するまで、にこにこ顔で見送ってくれました。
開店準備の忙しさから、イライラしがちなこのごろ、丸い傘立てを見ていると、おばあちゃまが笑顔で「まぁるく、まぁるく」と言っているような気がします。
雨の日のご来店は大変でしょうが、ちょっと、この傘立てに目をやってみて下さい。
改装工事も大詰め、今日、いよいよ看板が上がりました。
看板を上げる…、なんて、なにかの例えで使う言葉と思っていました。
夜来の雨もやみ、少し寒さも和らいだ日和のなか、看板が上げられていく作業を眺めるのは感慨深いものがありました。
看板に恥じない店にしていきたい、でも気負わずに、そんな思いを新たにした一日でした。
今日の写真は3枚連作でご覧下さい。
ちなみに作業を見上げる二人のうしろ姿は、 店主とインテリアコーディネーターさんです。
私、自宅近くの精神科医院で受付のパートをしています。
といっても、資格なし、キャリアなしで、なにをやってもドンくさいことこの上ありません。
今回、開店を機に退職することとなり、送別会を開いていただきました。
あたたかいメッセージとお花、「お店に置いて下さい」と素敵な記念品まで…。
もったいなくて、罰が当たるのではと、空を仰いだりしています。
いつ当たるかわからない罰にビクビクしているのも疲れ、今はいただけるだけのご恩をいただいておこうと、開き直ることに決めました。
いつか恩返しができますように。
毎月21日は京都の東寺で市が開かれ、「弘法さん」と呼ばれ、親しまれています。
今日は少し寒さも和らぎ、店に置ける掘り出し物はないかと、出かけていきました。
本業の準備より、内装やデザイン関係の準備の方が楽しい私です。
ちょっと変り種が好きで、謎の骨董品なんかを見ているとワクワクします。
そんななか、見つけました。
値打ちがあるのか、ないのか、さっぱりわかりませんが、
「これや」っていうものを…。
店に馴染むか、馴染まないか、まだ不明です。
ご来店の際は、探してみて下さい。
開店準備に忙しい毎日ですが、今日は日曜日、ちょっと一息つきました。
洗面所の鏡を磨いたり、たまっていた新聞を読んだり…。
それでも、やっぱり、気になるのは店のこと。月曜日にはまた重要な作業があり、無事済むか気にかかります。
ところで、冬は寒さに耐えられるよう脂肪を蓄えるため、太りやすいのだとか。
私も毎年、3kgくらい体重が増えます。
それが、なぜか今年は増えないばかりか、「痩せたね」と言われることも。
なんでも脳を使うと、大量の糖を消費するのだとか。
夢にまで、昼間の打ち合わせの続きを見る毎日、脳が休まる暇はないようです。
これも一つのダイエット方法かも。
今朝の雪には驚きました。
自宅近くの賀茂川の景色です。
植物園の西側、桜の名所「半木(なからぎ)の道」あたりです。
北区の「しののめ」までは自宅から数十歩、通勤時間は数秒でした。
新店「しののめ 寺町」までは、少し時間がかかります。
夫は自転車、私は地下鉄で通う予定です。
こんな雪の日は少し辛いかもしれませんが、それでも自分たちの店を持った喜びを感じながら、すがしい思いで通えたらいいなと思います。
玄関に建具が入り、店らしくなってきました。
そこでこの店に置く神棚を今日、購入してきました。
神棚を祀るのは初めて、苦しい時のなんとやら…、です。
狭い作業場のこと、置く場所にも制約があるのですが、 なんとか神様に心地よく過ごしていただけそうな場所を確保しました。
ちょうど背中から見守ってくださる位置です。
慣れないことで、失礼があっては大変と緊張していたのですが、
神具店の方曰く、気持ちがあれば大丈夫ですよ、とのこと。
神様がそんな器量の狭いわけはないですよね。
肩肘張らず、お祀りしていこうと思います。
よろしく!神様。
ただ今、店の改装中ですが、今回お願いしたのは、自宅の新築の際にお世話になったインテリアコーディネーターさんです。
センス抜群の彼女がホイッスルを吹き、集まってくださったメンバーの中には、やはり自宅新築の際にお世話になった元営業マン改め塗装屋さんも。
いいご縁に恵まれ、現場を覗くのが楽しみです。
ところで、うちの職人さんたち、男前率がかなり高いんです。
現場を通りかかられた際は、ちょっと覗いてみて下さい。
ただ今、店の改装中ですが、いざとなると
「ここ、どうしよう」っていうことばかり。
今の最大の懸案事項は「暖簾」です。
暖簾といっても、くぐるタイプじゃなくて、小さな布が連なっているタイプです。
で、カメラ片手にあちこち偵察に回っています。
これが様々な顔して店先で揺れているんですよ。
気にかけ出すとおもしろくて仕様がない。
皆さんも、視線を少し上げてみて下さい。
そんな合間に、小腹が空いたので、
寺町通りの蒲鉾屋さん「茨木屋」の向かいの喫茶店「スマート」で一息。
名物のホットケーキ、おいしかったです。
開店に向け、毎日準備にいそしんでいます。
スムーズに進むこともあれば、つっかえつっかえの作業も。(~_~;)
大変ではありますが、各分野で才能のある方たちのお力を借りて、新しいものを作り上げていくのは楽しいものです。
かけがえのないこの時間を、大切に過ごしたいと切に思うこのごろです。
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