今回はちょっとリアルなお話。お金のこと。あからさまに語るのははばかられるけれど、それでもやっぱり大事なお話です。
長年「ほぼ専業主婦」だった私。ずっと消費者側で過ごしていたんだなぁと、当たり前のことを今さらながらに痛感しています。そのころは気づかなかったけれど、店を始めて身に沁みるあれこれ。そんなことを勇気を出して書いてみたいと思います。
当時、私が店や商品を選ぶ際に基準にしていたのは、質は少しでも高いものを、価格は少しでも低いものを、そんなことだったように思います。要するに少しでも得をしたい。さらになにかしらプラスアルファなもの、店の雰囲気だったり、店員さんの対応だったり、そういうものから味わうお得感も大切な要素でした。
逆にちょっとしたことで、損をしたような気分になっていたこともあります。例えば、買った品物をプレゼント用に包装してもらうには、箱代が別にかかると言われた時。それくらいサービスしてくれたらいいのに、なんて思ったり。例えば、買った品物を宅配便で送ってもらう時。送料は余計な支出だなぁと思ったり。
自分が店を開いてみて、よくわかります。質の高いものを作ろうと思ったら、どうしたって価格が高くなること。それは中身のみならず包装品についても同じであること。暑い夏の日も凍える雪の日も、集配し輸送し配達してくださる宅配業者さんの働きがどんなにありがたいかということ。挙げれば切りがありません。
こうした品物やサービスを提供するには、お店の方の諸々のご苦労やご負担があったんだと、今になってわかります。それに対して相応の対価というものがあるんだということも。そうしたことに思い至ることなく、わがままな客だったと反省しきりです(笑)。
なにもわからず、経験もないまま飛び込んだ商売の世界。毎日がいっぱいいっぱいで、お金のことは二の次でやってきた気がします。開店から3年が過ぎ、少しずつではありますが、お金の流れがようやくわかりかけてきたでしょうか。まだまだですが。
もともと株だの金利だの財テクだの、さっぱり興味がない私。難しい経済のことはわかりませんが、もとい、簡単な経済のことすらわかりませんが、あれこれ考えるようになりました。
プレミア感のある高額商品から薄利多売の安価な商品まで、玉石混交の物が有り余る時代。世の中に出回っている様々な物やサービス、労働に対して、本当に正当な価格がつけられているのかなぁ、なんて。
「貧乏 暇なし」は大変そうでいて生き生きと働く姿が想像されて、結構好きな言葉です。が、石川啄木の「はたらけど はたらけど猶 わが生活(くらし)楽にならざり ぢっと手を見る」は切なすぎて、やりきれなくなります。物も人も適正に評価され、見合った価格、報酬が与えられる世の中であればいいなぁと思います。
ひるがえってうちの店。果たして、お客様に支払っていただいたお金の価値に対して、どれだけの価値を提供できているでしょう。どれだけのお得感、満足感を味わっていただけているでしょう。消費者だったあの日の私は、果たして「しののめ寺町」をひいきにするのかなぁ。
しきりに気になるこのごろです。
「おいしかった」「便利な場所に店を出してくれて助かった」「京都に来る楽しみが増えた」そんな有り難いお声を聞くにつけ、店を続けていくことこそがお客様への究極のサービスなのではないかと思ったりもします。利益を上げられなければ店を続けていくことはできません。利益を上げることは、店にとっての責任なんじゃないかとも思うようになりました。
大変ながらも楽しんでさせていただいている商売ですが、お金という観点から考えるようになったのは、私の中で大きな変化です。やっと商売の緒(ちょ)に就いた気がしています。ずいぶん時間がかかりました(笑)。
まだまだ難しいお金のことですが、しっかり考えながら、けれどとらわれ過ぎることなく、これからも長く店を続けていきたい。お客様から真に満足を感じていただける店を目指して。そんなことを思う近ごろの私です。ちょっと生々しい話になってしまいましたが、今後ともよろしくお願いします。
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