早いもので7月になりました。
さかのぼりますが、皆さんは6月30日に和菓子「水無月」を召し上がられたでしょうか。
お彼岸のおはぎ、十五夜の月見団子など季節の和菓子は、美味しい思いをしながら手軽に風流も味わえ、なんといい習慣かと思います。
特に夏越の意味合いを持つ水無月は、夏が苦手な私には欠かせないもので、
これで夏を乗り切れる!
と、毎年、自己暗示をかけるように、気合を入れて噛みしめています。
残念ながら二年ほど前に廃業されましたが、買うのはいつもご近所の和菓子屋「親玉堂」さんでした。こじんまりと風情のある店構えで、通りかかると、もち米を蒸すいいにおいがしてきたものです。カランカランと下駄の音が聞こえたと思ったら、「おはよう!」とご主人に声を掛けられることも。
和菓子はどれも、くせのない上品な甘さで、年配のご夫婦の人柄とともに、地元で愛される和菓子屋さんでした。
今は行きつけの店はなく、今年の水無月は出かけたついでにデパ地下で買いました。それなりに美味しかったのですが、なにか味気ないものが。
店先での奥様とのなんでもない会話、出来立て手作りならではの美味しさ…、思い出されるのは、やっぱり「親玉堂」さんの水無月です。味の記憶は味覚だけにとどまらず、その向こうに、えもいわれぬ情景が伴うものなのですね。
自分が店を開いて、「親玉堂」さんがどんなにか素敵な店だったかを実感しています。