私、アートが好きです。なかでも現代アートというんでしょうか、前衛アートというんでしょうか、専門的な分類はよくわかりませんが、そういうのが好きです。
見ていてとても気持ちがいいんです。もちろん気持ちがよくないものもありますが、好きな作品はもう本当に気持ちがいい。 隣で「なにこれ?!」っていう声を聞くこともありますが、好みは人それぞれ、ということでしょう。
なかでもイサム・ノグチの彫刻が好きです。数年前、滋賀県の美術館で初めて観て魅了されました。「真夜中の太陽」という有名な作品があります。直径2メートルほどの石の円環です。ドーナツ状の大きな石なのですが、不思議なことにすっくと立っています。まわりのどの方向からも眺められるように展示されていて、四方から眺めているうちに、とても不思議な感覚に陥っていった時のことを、今でもよく覚えています。
手前で眺めていると、 こちら側はこちら側、向こう側は向こう側。けれどひとたび向こうに回って眺めると、さっきまでのこちら側は向こう側で、向こう側がこちら側に。
円環の手前から向こうをのぞくと、まるで未来が広がっているように見えます。果てしなく見える未来も、向こうに回ればたちまち過去に。
円環の上と下。くるりと回せば、上が下に、下が上に。円環の右と左。ひょいと回せば、右が左に、左が右に。
終わりのない問答を繰り返すように、私は何度も行ったり来たりして、飽かず眺めていました。禅問答って、こんな感じでしょうか。
以来、私の胸の中にはイサム・ノグチの輪がペンダントのようにぶら下がっています。なにかに囚われそうな時、くるくる回していると、いつのまにやら開放されて、自由になれる気がします。ちょっと無理からではありますが。(苦笑)
このブログでも何度も書いていますが、この一年少しの間に私の状況は一変しました。「ほぼ専業主婦」から「自称にわか女将」へ。活動のフィールドが家の内から外へ。交流の範囲が自分の周辺から大きな広がりへ。考えるべきことの内容も多岐にわたり様変わり…。
確かに大きな変化です。けれど変わっているようで、実は大して変わっていないようにも思います。今さら私に大それたことが出来るわけはなし。出来るとしたら、これまで生きてきたなかで培ってきたことを、ただ精一杯形に表していくこと。過去を未来に。この先に待ち構えていることに真摯に向かっていくこと。未来はたちまち、また過去になるでしょう。
開店からもうすぐ一年を迎えます。それを前にして、そんなことに気づいたこのごろです。
コメントをお書きください