私、もともと化粧に手間を掛けない方です。朝、出かける前、ぱぱっと塗って、ちょちょっと仕上げ、ものの5分ほどで終了です。
店を始めてお客様の前に出るようになり、もう少しきちんとしないといけないなぁと常々思っていました。けれど、慌ただしさに紛れ、ずっとそのまま。毎日の習慣というのはなかなか変えられないものです。
余裕が出来たというわけでもないのですが、これまでにも、たまには立ち寄っていたデパートの化粧品売り場を、ちょいちょい覗くようになりました。流行のメイクをした若いスタッフさんは、まさしく花のように美しい。近寄るといい香りです。気になっていることをあれこれ相談してみると、あれよあれよという間に鏡の前に。手馴れた技でメイクを施してくれます。
キラキラしたアイシャドウや、プルプルしたグロスなど、自分ではしたことのないものを塗ってもらい、新鮮なような落ち着かないような。それでも「お綺麗ですよ、お似合いですよ」と褒められると、まんざらでもない気に。マニュアルどおりの声掛けとわかっていても、褒められるのはやっぱり気分がいいものです。つい一つ二つ買ってみたり。
あとは自宅に帰るだけでも、道中なんだかウキウキ。そんな自分に、まだまだ可愛いところがあるやん、と一人突っ込み(笑)。人から見てわかるほどの変化でもないのに、おかしなものです。
なにがそんなに気分いいのかと考えると、化粧そのものというより、自分を大切に扱われたということなんじゃないかと思います。大事なものを扱うように優しく触れられ、丁寧に仕上げられていく。しかも褒め言葉を添えながら。わずかの時間でも、自分が愛おしい存在なんだと再認識できた気がするのです。、
これって、本来は自分が自分にしてやらなければいけないことなのかもしれません。いつも自分のことを気に掛けて、大切なものとして扱う。それって本当はとても大事なことなんじゃないかと思います。なのに、自分に対してはどこかぞんざいで、なにかしら無理を強いて、いつも後回しにしがち。これじゃあ、自分も浮かばれない…。
ほんの少し丁寧に化粧をする時間を持つことで、こうした思いもほんの少し持ちたいものだと思います。
化粧ひとつで、そんなことを思ったこのごろでした。
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