店を構えるということ

店を構えるということ

ここ寺町に店を構えて二年少し経ちました。前回のブログ夢見通りの人々では、その喜びを綴りました。多くの方に読んでいただき感激しております。

 

一方で「店を構える」というのは、なんと大変なことかとも痛感します。

 

定休日は毎週水曜日と第二木曜日、あと夏季と年末年始の年二回、休みをいただいています。昨年、「しののめ」の創業者である義母の告別式の日は臨時休業いたしましたが(ブログ願わくば花の下にて春死なん)、あとは休むことなく今日に至っています。

 

健康であること、大きなトラブルが起こらないこと、有形無形のあらゆることが整ってはじめて店を開けることが出来ます。当たり前といえば当たり前のことですが、決して当たり前とはいかないことです。

 

一日一日が私には奇跡の連続に思えます。

 

朝、目覚めて、自宅から店に向かい、店の前に立つ時、あぁ今日も無事開けられたと心から安堵します。

 

不思議なもので、開店時間になると、店が自ら呼吸を始める気がします。お客様がいらっしゃらないと、どこか寂しげ。お客様で賑わうと、たちまち躍動を始める。まさに生きもののようです。

 

思いもかけないお客様の来訪に驚くこともしばしばです。先月のお祭りの日には、うちに置いている座布団を手掛けられたプロダクトデザイナーさんが、偶然に立ち寄ってくださいました。素敵な出会いは、座布団が招いてくれた幸運に違いないと思っています。

 

つい先日は、訳あって挨拶できないまま別れた知人が、遠方から訪ねてきてくださいました。人づてにうちの店のことを聞かれたとのこと。心のつかえが下りる感動の再会、十年ぶりのことでした。

 

なにかに困っていると、困ったところ困ったところに手を差し伸べる方が来てくださいます。私の心を見透かしたように、救いとなる言葉を持って。あぁ神様が遣わしてくださったんだなぁと思います。

 

偶然、必然ないまぜにした、こうした出会いが、毎日、この小さな店のなかで繰り広げられています。これもまた奇跡の連続です。

 

竹内まりやさんの楽曲に「毎日がスペシャル」という歌がありますが、私には「毎日がミラクル」。こんな驚きの中で暮らせる人生ってあるだろうかと、時に信じられなくなることも。 

 

一軒の店を構えるというのは確かに大変なことですが、店を構えなければ味わえない喜びがその何倍も。今風に言うと…

 

「リアル店舗」で「リア充(リアル充実)」

 

流行り言葉、省略言葉は好きではありませんが、これは言い得て妙な表現、なかなかに実感できる言葉です。(笑)

 

開店以来二年余、自分たちで作り、支えてきたと思っていたこの店、実はお客様が息を吹き込み、支えてきてくださったのではなかったか。そんなことを思うこのごろです。

 

閉店後、一日の無事に感謝します。店も静かに眠りに就くよう。静かに戸を閉め、鍵をかけ、店をあとにします。

 

今年は早くも厳しい暑さとなりました。体調管理に気を付けて夏を乗り切り、年末まで変わらず店を開けられますように。心から願った六月初日の朝でした。