ベニシアさんのこと

ベニシアさんのこと

先日、素敵な展覧会に出かけてきました。「ベニシアさんの手づくり暮らし展」です。

 

ベニシア・スタンリー・スミスさんという女性をご存じでしょうか? ご実家は本物のお城という、イギリス貴族の家系のお生まれ。けれど19歳で貴族社会を離れ、インド滞在を経て日本へ。やがて京都大原の地にたどり着かれます。

 

大原というのは京都の北の方。市内中心部からみると、とてものどかな地域です。そんな自然の中に建つ築100年の古民家を買い取り、日本人のご主人と共に自分たちで手直しをして住まわれるように。

 

ハーブを中心に、食や手仕事、周囲の方たちとの交流を大切に、それはそれは素敵な暮らしをされているご様子は、NHKの「猫のしっぽ カエルの手」でお馴染みで、私もその番組を見てべニシアさんを知った次第です。

 

会場では実物を使って、ご自宅のキッチンやお庭が再現されています。一つ一つ選び抜かれた調度品は、やはり貴族の生まれという環境の中で育まれた審美眼によるものなのでしょうえもいわれぬ存在感のあるものばかりです。

 

広大なお庭は、エリアごとにストーリーをもって作られ、まるで絵本に出てくるおとぎの国のよう。

 

日本人が忘れてしまっているような日本の伝統的なものと、ヨーロッパの香り漂うものとをうまく融合させ、オリジナルの世界観が広がるお住まい。そしてライフスタイル…。東洋と西洋がやさしく調和した様は、まさにベニシアさんそのものに思えます。

 

ひとはそれまでの人生で培ってきたもので出来ているんだなぁ。そう思わずにはいられません。

 

会場ではご主人である山岳写真家、梶山 正さんによる写真も多数展示されていました。大原の美しい自然と、それを慈しむようなベニシアさんの表情を捉えた写真の数々。そして傍らに添えられたベニシアさんの詩的なメッセージ…。

 

自然の移ろいに心を寄せ、敬虔な思いと感謝の気持ちで暮らしておられることが、シンプルな言葉から伝わってきます。なかでも心に響いた一文を書き出してみます。

 

秋は実りの季節。木の葉が落ちて枯れていくと、

人生について考えてしまいます。

 

私たちは、日々の悩みや心配事で頭がいっぱいになり、

身の周りの自然の美しさに気づかないことがよくあります。

真っ青な空に浮かぶ傘のような雲や、

秋の可憐なコスモスの上を軽やかに舞う二匹の蝶。

こんな何気ない美しさを、私たちは見逃してしまいがちです。

太陽は毎日、みんなのために輝き、

驚くほど美しい日の出と夕映えを見せてくれます。

 

なのに私たちは、果てしない考え事で

太陽を雲のように覆ってしまいます。

 

せめて時々は考えることを止めて、思い出しましょう。

人生は舞台稽古ではなく、美しく生きる機会なのだと。

 

なんか泣きそうになってしまった私…。

 

自然に寄り添うことは、自分の心に寄り添うことなんだなぁ。毎日が舞台稽古のような暮らしの中で、いつの間にかパサついてしまっていた心に、慈雨がしみ込んでいくようでした。

 

数奇な運命に翻弄されることもあったかとお察しするベニシアさんの人生。紆余曲折ありながらも、その時々にご自分の心に正直であられたからこそ、唯一無二な、こんな素敵な暮しにたどり着かれたのだと思います。

 

展覧会で買い求めた画集は、ベニシアさんのこんなメッセージで締めくくられています。

 

日本の女性はとても賢い。

疲れていても、悲しくても、いつも微笑み、笑っているから。

私は、日本の女性から「和」と「柔」という英知を学びました。

子供の頃は、人生の意味についてよく考えました。

どうして私たちは生きているのか。

ある日、その答えに気づきました。「幸せになるため」だと。

物事をどう見るかで、幸せは決まります。

知恵と優しさと笑いの心を持って、人生を受け入れましょう。

 

この境地に至るにはまだまだです。それでも、べニシアさんのメッセージの一つにあるように、日に一度でも空を見上げる時間を持ちながら、自分の幸せを見失わないように生きていきたいものだと思います。

 

Listen to your heart

自分の心の声に耳を傾けて

 

たくさんのヒントを与えていただいた展覧会でした。

 

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