中島みゆきさんの「誕生」という歌をご存知でしょうか? このところ私のもっぱらの愛唱歌となっています。
ひとりでも私は生きられるけど
でもだれかとならば 人生ははるかに違う
こんな歌詞で始まる歌。切ない恋の歌かと思いきや、後半、壮大な愛の世界にぐいぐいと導かれていきます。
めぐり来る季節をかぞえながら
めぐり逢う命をかぞえながら
畏れながら憎みながら
いつか愛を知ってゆく
泣きながら生まれる子供のように
もいちど生きるため 泣いて来たのね
初めて聴いた時、鳥肌が立つ思いがしました。なんてスケールの大きな歌かと。今でも聴くたびに心揺さぶられますが、なかでも印象的なのが、この部分…。
Remember 生まれた時
だれでも言われた筈
耳をすまして思い出して
最初に聞いた Welcome
Remember 生まれたこと
Remember 出逢ったこと
Remember 一緒に生きてたこと
そして覚えていること
赤ちゃんの誕生は祝福に包まれているものです。こうして生まれた命。今、どんな困難を抱えていたとしても、ひとは皆、生きていく価値があるんだよ。私も、あなたも、誰でも…。
そう語りかけてくれているようで、自信を失い落ち込む時。あるいは、まわりにそういう人を見る時。エールを送るように、思わず心の中で口ずさんでしまいます。
こんな言葉を世に送り出せる中島みゆきさんという人。あぁ、天才的なアーティストだなぁと感心するばかりです。
話は変わりますが、テレビをつければ、毎日、悲惨なニュースが飛び込んできます。なかでも立て続く幼児虐待のニュースは、やり切れない思いがします。
いたいけな体と心に受けた傷はいかばかりか。短い人生、わずかでも楽しい時間はあったんだろうか。いっそ生まれてこない方が幸せだったんじゃないだろうか。
そんな思いに駆られる時、心に浮かぶのが「誕生」最後の絶唱部分です。
Remember けれどもしも思い出せないなら
私 いつでも あなたに言う
生まれてくれて Welcome
確かに、望まれないで生まれてきた命があるかもしれない。でも神様は祝福してくれたよ。生まれてこない方がよかった命なんて一つもないんだよ。
力強い歌声は、絶望のなかで亡くなっていった幼子の魂にそう語りかけているようで、一片の救いがもたらされる気がします。
それは、そうした幼子だけでなく、あまねく私たちへも語りかけられているのかもしれません。
祝福されて生まれてきたはずなのに、日々の困難さから、忘れてしまっている人。自分なんてなんの価値もないと自暴自棄になってしまっている人。そうした人がたくさんいる時代のように思えます。
「誕生」は生き辛い今の時代に贈られた、天上からのメッセージのよう。
縁あって、この世に誕生した命。生まれて、出逢って、生きていく命。誰もが個々の命を慈しみ、全うできたらいいな。
「誕生」の歌を口ずさみながら、そんなことを切に願うこのごろです。
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